二酸化炭素→ギ酸生成における 酵素触媒変換効率を約560倍向上させる分子の開発に成功
この研究発表は下記のメディアで紹介されました。
◆8/23 化学工業日報
◆8/25 朝日新聞
◆9/5 ? 日本経済新聞
人工光合成研究センターの天尾 豊(あまお ゆたか) 教授と理学研究科後期博士課程 池山 秀作(いけやま しゅうさく)大学院生は、二酸化炭素をギ酸に変換する際に、天然の補酵素を用いた場合と比べ約560倍も活性を向上させる人工補酵素分子の開発に成功しました。
【掲載日時】
2016年8月20日(土) 日本時間 午前6時※1
【発表雑誌】
Chemistry Letters
【論文名】
Novel artificial co-enzyme based on the viologen derivative for CO2 reduction
biocatalyst formate dehydrogenase
【著者】
Shusaku Ikeyama and Yutaka Amao
【掲載URL】
http://www.journal.csj.jp/toc/cl/0/0
※1:本論文はAdvance Publicationとして未校正で先行掲載されます。
研究概要
太陽光エネルギーを利用し二酸化炭素を有機分子に変換する人工光合成系を創製するための重要な要素技術の一つとして、有効な触媒の開発があげられます。
本研究では、二酸化炭素をギ酸(燃料、化成品、エネルギー貯蔵媒体)に変換する反応を促進させる触媒=“ギ酸脱水酵素”の活性を飛躍的に向上させる、単純な化学構造を持つ人工補酵素の開発に成功しました。
ギ酸脱水素酵素を使って二酸化炭素からギ酸を作るためには補酵素と呼ばれる分子が必要です。これまでにメチルビオローゲン※2やジクワット※3と呼ばれる人工補酵素を用い、ギ酸脱水素酵素により二酸化炭素からギ酸を作ったところ、天然の補酵素を用いた場合よりもはるかに活性を向上させることに成功しています。
※2:http://www.osaka-cu.ac.jp/ja/news/2015/81sxi
※3:http://www.osaka-cu.ac.jp/ja/news/2016/160805
今回は、ビオローゲンの化学構造にアミノ基(-NH2)を2つ導入した新たな分子を合成し、人工補酵素として用いることにより、これまでの最高値である天然の補酵素を用いた場合より560倍もの活性向上に成功しました。
今回の発見は、今後の二酸化炭素を有機分子に変換する人工光合成系実現のための触媒設計?開発に大きく寄与すると考えられます。