常圧二酸化炭素からプラスチックの直接合成に世界で初めて成功
? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? プレスリリースはこちらから
この研究発表は下記のメディアで紹介されました。
◆7/28? ?鉄鋼新聞、日刊産業新聞、テレ東BIZ
◆7/29? ?日刊工業新聞
◆7/30? ?@DIME
◆8/2? ? ?朝日新聞(夕)、朝日新聞デジタル
◆8/3? ? ?鉄鋼新聞、Yahoo!ニュース
◆8/4? ? ?化学工業日報
◆9/7 ? 日経産業新聞
◆9/25? ?月刊科学雑誌「Newton」11月号
◆11/23 毎日新聞
概要
大阪市立大学人工光合成研究センター 田村正純准教授、東北大学大学院工学研究科応用化学専攻 冨重圭一教授、日本製鉄株式会社先端技術研究所 中尾憲治課長らは、脱水剤を用いずに、常圧二酸化炭素とジオール※1から脂肪族ポリカーボネートジオールの直接合成を行う触媒プロセスの開発に世界で初めて成功し、酸化セリウム触媒を組み合わせることで、高収率かつ高選択率で脂肪族ポリカーボネートジオールを合成できることを学会誌「Green Chemistry」上で発表しました。
ポリカーボネートジオールは、プラスチックに代表されるポリウレタン合成の重要中間体であり、現在、ホスゲン※2や一酸化炭素を原料にして合成されていますが、これら原料は有毒なため、グリーンケミストリー※3の観点から原料を代替する技術の開発が求められています。代替原料に二酸化炭素を用い、ジオールと反応させてポリカーボネートジオールを合成する手法は、水のみを副生するグリーンな反応系として注目されているものの、高収率を得るには、高圧二酸化炭素や脱水剤を用いる必要がありました。本研究で見出した手法はこれら課題を克服するもので、酸化セリウム触媒を用い、ジオールに常圧の二酸化炭素を吹き込むことにより、生成した水を反応系外に除去することが可能になり、目的のポリカーボネートジオールを高選択率かつ高収率で得ることに成功しました。
本研究成果は、2021 年 7 月 26日(月)に『Green Chemistry (IF=10.18)』にオンライン掲載されました。
【発表雑誌】Green Chemistry (IF=10.18)
【論文名】Direct synthesis of polycarbonate diols from atmospheric flow CO2 and diols without using dehydrating agents
【著者】Yu Gu, Masazumi Tamura,* Yoshinao Nakagawa, Kenji Nakao, Kimihito Suzuki, and Keiichi Tomishige*
【論文URL】https://doi.org/10.1039/d1gc01172c
研究者からのコメント
田村 正純准教授
二酸化炭素の削減は世界的課題であり、二酸化炭素の化学的固定化は有効な手法の一つと考えられています。本研究では、常圧二酸化炭素をポリマーに直接変換することができる新しい固体触媒プロセスの開発に成功しました。酸化セリウム触媒存在下、二酸化炭素がジオールと反応することで、脱水剤を用いることなく化学品や化学品原料として有用なポリカーボネートジオールが得られます。今後、実用化に向け、触媒、プロセスのブラッシュアップを行って参ります。
1.背景
地球温暖化に伴う気候変動や自然災害が顕著になってきており、主要な温室効果ガスの一つである二酸化炭素の削減が世界的に求められています(パリ協定、削減目標と実行計画)。二酸化炭素をC1化学原料※4として捉え、有用な化学品に変換する手法は近年注目を集めており、二酸化炭素固定化に資する技術として期待されています。しかしながら、二酸化炭素は非常に安定な分子であり、その活性化には高機能な触媒とそのプロセス設計が鍵となります。二酸化炭素の変換技術として、二酸化炭素の炭素原子の酸化数を変化させることなく変換する非還元的手法があり、二酸化炭素に対しアルコールやジオールをうまく反応させることができれば、有用化学品である有機カーボネート※5や脂肪族ポリカーボネートが合成可能になります。これらのカーボネート化合物は、主に、ホスゲンや一酸化炭素といった有毒な化学原料を用いて合成されており、これらのプロセスを代替する技術の開発が強く求められています。二酸化炭素の長期的な固定化については、ポリマーに変換する方法が有利になると考えられます。しかしながら、二酸化炭素とジオールからポリカーボネート合成は、そのままでは反応がほとんど進行せず、副生する水を除去しないと目的のポリカーボネートがほとんど得られない(<1%)といった課題を抱えていました。二酸化炭素とジオールからの直接重合例として、ニトリルを有機脱水剤、酸化セリウムを触媒として用いた触媒反応系が報告されていますが、高圧の二酸化炭素を必要とし、脱水剤の回収?再生が課題となります。さらに、脱水剤であるニトリルと原料ジオールや生成物とが反応し、それにより生成した副生成物の混入といった問題も抱えることになるため、脱水剤を用いない触媒プロセスが望まれていました。
?
2.研究内容
二酸化炭素とジオールからのポリカーボネートジオール合成では、水が副生し、収率の向上には水の除去が必須となります。脱水剤を用いない水除去手法として、生成物やジオールと水の沸点差に着目し、常圧の二酸化炭素を吹き込み、水を蒸発除去することで目的のカーボネート合成が進行すると予想しました。結果、様々な金属酸化物触媒の中で、酸化セリウム触媒のみで高い活性を示すことが明らかとなり、脱水剤を用いることなく、また、高圧二酸化炭素を必要としない、非常にシンプルな触媒反応系の開発に成功しました。
3.期待される効果
本技術により、添加剤を用いず、常圧の二酸化炭素